助けてくれた人 ページ17
彼の腕の中で
ただひたすら泣いた。
枯れることなく溢れ出て来る涙を
彼は拭うこともなく
ただ静かに隣に座っていた。
少しずつ感情の温度は下がっていき
涙が止まり始めた頃。
?「落ち着いた?」
下から顔を覗かれる。
きれいな二重の目と、高い鼻。
クリーム色の髪。
「すみません、ありがとうございました、」
立ち上がって帰ろうとすると
?「わっ、ちょっとまって!ほっとけないよ」
何があったの?俺で良ければ聞くよ?
また隣に座るよう促される。
知らない人に話すのは気が引けるが
この人なら話しても忘れてくれそうだと思った。
周りの目を気にして、彼と別れたこと
そこから何も手につかなくなったこと
学校を中退したこと
職が見つからないこと
すべてを話すと、うーん、と悩み
思いついたように表情が明るくなる。
?「じゃあ、俺の働いてるお店で働いてみたら?」
誰かと関わらないと傷癒えないでしょ〜と
手を引き歩き始める。
彼が働いていると言ったのはキャバクラで
要するにキャバ嬢になって働いたら?という提案。
初めての水商売で、ハードルは高く
躊躇うし、向いているのかとも疑った。
オーナーに紹介してくれて
ぜひ、来てほしいと言ってくれた。
未経験からの女の子も多いらしく、
職が見つからない以上、ここで働く他なかった。
ここで働くと決め、契約書や社員寮に関する説明がききおわり、ぐったりしていると
ラ「ラウールって言います。慣れるまでしっかりサポートさせて?」
さっきの彼が私につく黒服だという。
知らない人がつくより安心感があった。
「女の子と、関わったほうがいいです、か?」
控室で話しているため、もちろんお店の女の子が
出入りしていて、
みんな美人でキラキラしててスタイルも良くて
そして恐ろしかった。
柔らかい表情が無表情になる瞬間。
背筋が凍るような感覚。
?「わっ新人さーん?よろしくねぇ〜」
なんて笑顔で挨拶されたと思ったら
椅子に座ったときの表情は
凍りついたように冷たくて
そんな顔でタバコを吸うものだから
私は話すこともできず、
ただ俯いていた。
明日からの出勤。
本当に大丈夫だろうか。
ラ「明日、迎えに行くから」
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作者名:あまつかくらげ | 作成日時:2024年3月20日 21時